大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

最高裁判所第二小法廷 昭和25年(さ)30号 判決

主文

本件非常上告を棄却する。

理由

本件非常上告の理由について。

和歌山簡易裁判所が昭和二四年一一月九日所論窃盗被告事件について被告人に対し少年法を適用し一〇月以上二年以下の懲役及び未決通算二〇日の判決を言渡し該判決が当時確定するに至ったのであるが右は被告人が同裁判所において木村常夫と偽名すると共にその生年月日を昭和六年一一月一五日と偽っていたためであること及び右判決確定後被告人の本名は山本一男であってその生年月日も昭和四年七月二五日であることが判明したことは一件記録により明らかであるから右確定判決は裁判時において既に成年に達していた被告人に対し少年法を適用したことにはなるがそれは同裁判所が前記のように被告人が生年月日を偽っていたために被告人が成年であったにかかわらずこれを少年と誤認したことに基因するのである、而して非常上告は抽象的に法規適用の誤を正すことを目的とするものであって個々の裁判の事実認定等の誤を是正することを目的とするものではないから(昭和二五年(さ)第三六号同年一一月八日大法廷判決参照)本件のように確定判決の事実認定を争いその事実認定非難を前提としてその審判が法令に違反したものとして非常上告をすることはこれを許さないものと云わなければならない、従って論旨は非常上告適法の理由とならないものである。

よって刑訴四五七条により主文のとおり判決する。

この判決は裁判官全員一致の意見である。

(裁判長裁判官 塚崎直義 裁判官 霜山精一 裁判官 栗山 茂 裁判官 小谷勝重 裁判官 藤田八郎)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例